モロヘイヤという名前は、アラビア語の「ムルキーヤ」という言葉が由来となっており、日本語で「王様の野菜」や「王家のもの」という意味を表します。
この名が付いたきっかけは、古代エジプトのとある王様のある物語が深く関わっています。
古代エジプトの王様が、ある日重い病気になってしまいました。なんとか王様の病気を治そうと、モロヘイヤの葉を刻んでスープにしてみたところ、王様の体調はみるみる回復し、あっという間に病気が治ってしまったのです。
現在でもエジプトをはじめ、アフリカ北部や中近東などの気温の高い地域では、伝統的な家庭料理としてモロヘイヤのスープが愛飲されているそうです。特にエジプトでは、モロヘイヤスープを作るための専用包丁「マハラタ」が各家庭に1つは必ず用意されていると言います。
さて、そんな栄養満点なモロヘイヤですが、なんと非常に強い毒性を持っているとても危険な野菜のひとつだということをご存知ですか。
今回は栄養満点だけど食べると危険な夏野菜「モロヘイヤ」の食べ方についてご説明したいと思います。
モロヘイヤの毒性とは?とっても危険って本当?
ベランダのモロヘイヤでスープでも / akiraak2
エジプトでは、およそ5000年以上前から栽培が行われているモロヘイヤですが、王様の生命を救ったり、絶世の美女と称されるクレオパトラも愛した野菜として有名な緑黄色野菜です。
モロヘイヤが日本へ伝わったのは、1980年代のことです。
当時からビタミンやミネラルが豊富に含まれている健康野菜として大勢の人々から注目を集め、話題となりました。
しかし、そんな栄養満点なモロヘイヤですが、なんと強い毒性を持つ野菜でもあり、かつてアフリカの原住民たちのあいだで矢毒として用いられてきたという歴史もあります。
モロヘイヤに含まれている毒成分は「ストロファンチジン」という自然界の植物に見られる強心配糖体です。
強心配糖体とは、心臓の筋肉を収縮させる増強作用を持つ強心剤と同じ働きがあります。
強心配糖体自身は、その薬理作用によって、現在心不全の治療薬として用いられているのですが、とても激しい作用を有するため、薬用として使用することができるのは極限られた一部の植物に含有されているものとなっており、モロヘイヤに含まれるストロファンチジンは致死性の有毒成分に属しているため医療分野では使用されることはありません。
モロヘイヤは食べても問題ないの?
今日のサラダ(モロヘイヤと水菜)#dinner / is_kyoto_jp
モロヘイヤに含有されている強心配糖体「ストロファンチジン」ですが、主に種子と果実に含まれており、特に完熟した種子は猛毒ですので、自宅や学校などでモロヘイヤを栽培されている場合は、注意しなくてはなりません。
モロヘイヤは夏野菜ですので、4月から5月にかけて種蒔きが行われ、5月から6月に植え付けが始まります。そして、6月から10月にかけて収穫シーズンとなり、日照時間が短くなる秋を迎えると、可愛らしい黄色の花を咲かせ、実がなります。
モロヘイヤの可食部分は、主に葉と茎ですので、花や果実、種子などを食べるのは避けるようにしましょう。
しかし、可食部であるモロヘイヤの葉のなかでも新芽が出てから収穫期を迎えるまでの期間に現れる若葉には微量のストロファンチジンが含有されていることが明らかにされておりますので、発芽間もないモロヘイヤの若葉を食べるのは止めましょう。
モロヘイヤの毒性は、成長するにしたがって変化して行くという特徴があります。
このことについて内閣府の食品安全委員会は、モロヘイヤの毒性について次のように発表しています。
「収穫期の葉・茎・根と蕾発生期の葉・茎・根・蕾の各部位とモロヘイヤ健康食品、お茶などからはストロファンチジンは検出されていない」
食品安全委員会がモロヘイヤを食べても安全だと保証している時期と部位以外は、中毒症状を引き起こす恐れがございますので、しっかり守って摂取するようにしましょう。
モロヘイヤを食べて中毒症状が出てしまった場合の対処法
今日のスープ:モロヘイヤとアボカドのスープ #dinner / is_kyoto_jp
誤ってモロヘイヤの花・果実・種子を食べてしまった場合、以下の症状が現れます。
・うっ血性心不全
・動悸や息切れ
・めまい
・全身の倦怠感
・食欲不振
・嘔吐
・下痢
・尿量の減少
・むくみ
・呼吸困難 など
中毒症状が出てしまった場合は、無理に下痢や嘔吐を止めず、スポーツドリンクなどを摂取して水分補給をしながら体内の毒素を排出します。
もしも、下痢や嘔吐以外の症状が現れている場合は、速やかに医療機関へ連絡し、医師に診てもらいましょう。
呼吸困難に陥っている場合は、救急外来へ連絡し、早急に対処してもらうことをオススメします。
まとめ
今回は健康野菜「モロヘイヤ」の意外な一面をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
モロヘイヤの毒性についてですが、スーパーやデパートなどで販売されているものは、生産者によってしっかりと安全対策が行われておりますので、中毒症状を引き起こす心配は一切ございません。
家庭菜園などでモロヘイヤを栽培されている方は収穫シーズンや危険部位についてしっかり知識を付けておくことが大切です。
これからモロヘイヤが美味しくなる季節ですので、自宅で栽培されている方はご注意ください。