奈良時代に記された「正倉院文書」などには「冬瓜」や「鴨瓜 (冬瓜の和名)」という名で登場しており、平安時代に記された「本草和名」には「白冬瓜」という項目に「和名 加毛宇利 (かもうり)」と記載されています。
また、江戸時代の「和歌食物草本」には“冬瓜は霜ふりて後食すべし”とあり、冬瓜が熟した際に表皮に真っ白な粉 「ブルーム」で被われるため、先人たちはこのブルームの有無で冬瓜の食べ頃を見極めていたということがうかがえます。ですが、近年、市場に出回っている冬瓜のほとんどが、ブルームが出ない琉球種となっています。
さて、夏に旬を迎える冬瓜ですが、なぜ「夏瓜」ではなく「冬瓜」なのかご存知ですか。
今回は、冬瓜という名前の由来と共に、冬瓜に含有されている栄養素による効果や効能、そして果肉だけではなく皮や種子にも栄養があるのかどうかをご説明したいと思います。
夏野菜なのに「冬瓜」と呼ばれる理由とは?
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冬瓜の旬は、7月から9月ごろであり、まさに今が食べ頃の野菜なのです。
ですが、なぜか名前に“冬”の文字が使用されており、「冬が旬じゃないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。
冬瓜の名前の由来は、野菜の中で最も保存性が高く、夏に収穫された果実は冬まで貯蔵することができることから「冬瓜」という名が付いたと言われています。ですが、実際はそこまで日持ちすることはできませんので、ご注意ください。
冬瓜の保存期間は、丸ごとの状態で風通しの良い冷暗所にて最大2か月から3ヶ月、カットされたものの場合は傷みやすいので、ワタと種子をキレイに取り除き、サランラップで丁寧に包み込んでから冷蔵庫、もしくは、冷凍庫にて保存しましょう。
冬瓜に含まれる栄養素や気になる効果・効能
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全体のおよそ95%が水分で出来ている冬瓜は、100gあたり約16kcalと、とってもヘルシーな夏野菜であり、ダイエットサポート食材として女性から高い人気を誇っています。
もちろん、水分だけではなく、冬瓜100gあたりカリウム 200g・カルシウム 19mg・ビタミンC 39mg含有されており、さらに食物繊維も豊富に含まれているため、便秘解消などに効果を発揮します。
また、肥満予防に効果的なサポニン、糖の吸収を抑制かつガン予防に働きかけるトリテルペンといった栄養成分もたっぷり含まれています。
冬瓜は、中国で古くから漢方の1種として用いられており、古代中国の薬学書「食療草本」にも“痩せたい人は長期間食べ続けた方がよく、太りたい人は食べてはならない”と記されています。
冬瓜は火照ったカラダを冷まし、紫外線によるお肌へのダメージもケアしてくれますので、暑さの厳しい今の時期に積極的に摂取したい野菜でもあります。
冬瓜の皮や種子にも栄養があるって本当!?
Pixnet-冬瓜鑲肉2009.10.18 / StudioRay
冬瓜といえば、縦にカットしてワタや種子をスプーンですくい取り、皮を厚めに剥いて調理するのが一般的ですが、実は冬瓜の皮と種子には栄養がギュッと詰まっており、中国では冬瓜の皮を「冬瓜皮」、種子を「冬瓜子」と呼び、漢方として用いています。
冬瓜の皮には、水分代謝をサポートする効能があります。
特に気温30度を超える夏場は、気温差の激しい場所を行ったり来たりすることで発汗が正常に行われなくなり、体内に不要な水分が溜まってしまうことが多々あります。
水分代謝が悪くなると、体内に不要な老廃物などが蓄積されてゆくため、水太りや肌トラブルの原因となります。冬瓜の皮には、水分代謝をサポートする効能以外にも、カリウム・ビタミンC・食物繊維などが豊富に含まれており、カロリーも海藻並みですので、とってもヘルシーな食材となっています。
冬瓜の種子は、煎じて飲むだけではなく、痔や打ち身の外用薬として用いられるほど栄養満点な食材です。種子には美白作用とお肌を柔らかくする働きがあるため、主に美容クリームの材料として使用されており、特に乾燥肌の方にオススメです。
冬瓜の種子には紫外線によるお肌へのダメージを回復させる効能があり、さらに果肉や皮同様、優れた利尿作用も有しておりますので、身体の内側から美しくなることができます。
まとめ
今回は冬瓜に含まれる栄養素と効能、そして、皮や種子が持つ効果や効能についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
冬瓜の皮や種子は、しっかり火を通すことで柔らかくなります。冬瓜はとってもエコな食材ですので、この機会に冬瓜を丸ごと使用したフルコースを召し上がってみてはいかがでしょうか。
ただし、冬瓜は身体を冷やす性質がありますので、唐辛子や生姜、海老といった身体を温める食材と組み合わせて調理するように心掛けましょう。