インスタントラーメンといえば、サッポロ一番やマルちゃんなどが有名ですが、最近では“爆発的に旨い!”と称される利尻漁業協同組合の「利尻昆布ラーメン」や“ノンフライ麺なのに生麺のようなコシを持つ“菊水の「寒干し さっぽろ 純連」、”海老の出汁がしっかり出ており、パンチのある塩味ラーメン”藤原製麺の「北海道 えび塩ラーメン」などのインスタントラーメンが若い世代と中心に爆発的なヒットを見せています。
そんな手軽に作れる画期的な食品のインスタントラーメンは、なんと日本生まれの食品であり、インスタントラーメンの祖と呼ばれているのが日清食品から販売されている「チキンラーメン」だということをご存知ですか。
そして、世界初のインスタントラーメンの誕生を記念して1958年8月25日をラーメン (即席ラーメン)の日に制定し、毎年8月25日前後には、ラーメン記念日フェスタを開催しているそうです。
ところで、皆さんは世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」がどのように誕生したのかご存知でしょうか。今回はチキンラーメンの誕生秘話と名前の由来についてご説明したいと思います。
元祖即席ラーメン「チキンラーメン」の歴史
チキンラーメン / yamakazz
チキンラーメンといえば、「すぐおいしい、すごくおいしい」というフレーズがとても印象的ですよね。
現在チキンラーメンのCMは、新垣結衣さんが2013年7月より担当されており、過去には千昌夫さん、グッチ裕三さん、菅野美穂さん、国分太一さん、仲間由紀恵さん、所ジョージさんと芦田愛菜さんなど豪華著名人が担当されていました。
即席ラーメンの祖であるチキンラーメンは、日清食品の創立者である安藤百福氏によって考案された中華風即席麺です。
安藤氏は、幼い頃に両親を亡くしており、呉服店を営む祖父母のもとで商売の現場を間近で見ながら育ったそうです。そのため、人一倍独立心と事業意欲が高く、「誰もやってのけていない新しいことをしたい」ということで、最初に選んだのが、綿糸や毛糸などをループ状の編み目の集合によって優れた伸縮性を持つ“メリヤス”を販売する繊維事業でした。このとき安藤氏は22歳だったそうです。
人生初の事業で大成功を収めた安藤氏は、その後、幻灯機の製造や炭焼き事業、バラック住宅の製造など多種多様な事業を手掛けたそうです。なぜ、様々な事業を手広く行ったのかと疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。
安藤氏は、常に時代の流れと共に変化する流行を先取りし、それをすぐさま事業化するという冒険心と失敗しても諦めない活力、そして、どの事業も「何か人の役に立てるものは無いか」「世の中を明るくする仕事は無いか」という信念のもとに行っていたからです。
数々の事業で成功を収めてきた安藤氏ですが、即席ラーメンの祖であるチキンラーメンはどのようにして誕生したのでしょうか。
終戦後、日本国内はたいへんな食糧難に見舞われ、各地で栄養失調による行き倒れが後を絶ちませんでした。そんな悲惨な街の光景を目の当たりにした安藤氏は「食事は大切だ。食べるものが無くては、衣も住も、芸術も文化もあったもんじゃない!」と食の重要性を痛感したそうです。
ある日、安藤氏が大阪駅近くの闇市を通りかかった際、寒空のもとで1杯のラーメンを食べるために大勢の人々が列を成している様子を見かけたのです。このとき、日本人が麺好きであることを確信したそうです。
1957年、自身が理事長を務めていた信用組合が破綻したことで、大阪府池田市にある借家以外の全ての財産を失ってしまいます。彼は「失ったのは財産のみ。その分、経験が血や肉となって身に付いた」と考え、かつて闇市にてラーメンを食べるために長蛇の列を成していた人々の姿や日本人が麺好きであることを想いだし、“お湯さえあれば、どこでも食べられるラーメンを作ろう”と決意したのです。
安藤氏は、借家の裏庭に小さな小屋を建て、ラーメンの開発に着手します。お湯のみで食べられるラーメンの開発に必要な道具や材料は全て自身の手で探し回り、1日の平均睡眠時間はたったの4時間という生活が1年続き、休む間もなくラーメン開発を行っていたと言います。
安藤氏には、ラーメンを作るに当たり5つの目標がありました。
それは
1.美味しくて飽きのこない味
2.台所に常備できる優れた保存性を持っている
3.調理時間が短い
4.値段が安い
5.安全で衛生的である
の5つです。
しかし、麺作りに関してはド素人であった安藤氏は、日夜試作品を作っては捨てるという日々が続き、ようやく理想的な配合に辿り着くと、今度は麺を長期間保存するための方法やお湯を注いですぐに食べられるようにする方法について模索します。特に保存性と簡便性の実現は困難を極めたそうです。
チキンラーメンの誕生と名前の由来
チキンラーメン / ayumew
そんなある日、安藤氏がキッチンへ行くと、お嫁さんが天麩羅を挙げていたそうです。高温に温められた油の中へ入れられた小麦粉の衣は、天麩羅鍋の中でプクプクと泡を立てながら水分をはじき出していたのです。その様子を見た安藤氏は「これだ!」と思い立ち、すぐさま麺を油で揚げてみたそうです。
すると、麺に含まれる水分が高温の油によってはじき出され、ほぼ完全に乾燥した状態の麺が誕生したのです。
そして、半年間そのまま放置しても変質や腐敗することなく、さらにお湯を注ぐと水分が抜けた部分からお湯が吸収され、元の柔らかい麺へと戻ることも発見したのです。これがインスタントラーメンの基本となる「瞬間油熱乾燥製法」の起源だと言われています。
こうして、安藤氏が試行錯誤の末に完成させた“お湯さえあれば、どこでも食べられるラーメン”こと「チキンラーメン」が1958年8月25日に発売され、たった2分で食べられるというチキンラーメンは、当時では考えられない食品だったこともあり“魔法のラーメン”と呼ばれ、話題となりました。
今では様々な種類のインスタントラーメンが販売されておりますが、チキンラーメンは発売当初と変わらぬ味を守り続け、今も尚、大勢の人々の胃袋を満たし続けています。
安藤氏が考案した即席ラーメン「チキンラーメン」というネーミングは、チキンのエキスが入っているため、このような名前になったと言われています。
チキンを使った理由として、フランスや中国といった先進国で食べられているスープの基本はチキンであり、しつこくなくシンプルで淡白な味であり、みんなに愛されているということで即席ラーメンを作り始める前からチキン味で行こうと決めていたそうです。
まとめ
今回は8月25日のラーメンの日とチキンラーメンの歴史についてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
即席ラーメンは、2005年7月に宇宙飛行士・野口聡一氏と共にスペースシャトル「ディスカバリー」に乗り込んだり、国際食として多くの人々から愛されています。
チキンラーメンは世界初のインスタントラーメンというイメージがありますが、実際は1955年に即席麺に欠かせない屈曲麺製法を発明したおやつカンパニーによって世界発の味付中華麺が発明されていたのですが、商業的な成功を収めたのがチキンラーメンだったため、インスタントラーメンの祖と呼ばれています。
この機会にチキンラーメンとベビースターラーメンを食べて、ラーメンの日を家族や友人たちと共にワイワイ楽しんでみてはいかがでしょうか。