体長150cmほどの白銀に輝く平たい魚の太刀魚は、6月から10月に産卵期を迎えます。
太刀魚の旬は産卵期の期間と被っており、7月から11月頃となっています。
太刀魚には鱗や尾びれ、腹びれがありません。ですが、身体の表面にグアニン質と呼ばれる銀粉が重なり合い表皮を覆っているのが特徴の魚です。
そんな太刀魚の調理方法は主に塩焼きや西京焼きなどの焼き物や天麩羅にから揚げなどの揚げ物などが一般的ですが、鮮度の高い太刀魚の場合は刺身やなめろう、たたきなどもお勧めです。
しかし、魚介類を生で食べると寄生虫などに感染する危険性があります。
そこで、太刀魚をお刺身で食べても安全なのか。寄生虫はいないのかをご説明したいと思います。
太刀魚をお刺身で食べる方法
Trichiurus lepturus / naotakem
太刀魚は日本刀のような美しい輝きを放つ魚です。
太刀魚は南北回遊をする魚類の1種で、春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。
日本では北海道の南部から南の方角全域に生息しています。
立って泳ぐ魚のため太刀魚と呼ばれる説と日本刀の太刀を思わせるから太刀魚と呼ぶ説などがありますが、定かではありません。
太刀魚は小さいものだと小骨が多くなり身が薄い傾向にあるため、出来れば大きく成長しているものがお勧めです。
しかし、大き過ぎる太刀魚は大まかな風味になりやすいため、程よいサイズの太刀魚を選び、購入しましょう。
太刀魚はしなやかにたわむ身体をしているため細かな骨が多く、しっかりと処理を施していないと非常に食べ辛い魚料理となってしまいます。
また、太刀魚をお刺身にして召し上がる際は表面を覆っている皮を引かずに、皮付きのまま召し上がるのが一般的な食べ方です。
太刀魚の皮と身の間にはうま味成分がギュッと詰まっているので、太刀魚のお刺身を堪能したい場合は皮付きのまま召し上がりましょう。
しかし、包丁の研ぎ具合によっては太刀魚の皮が上手く切れないため、見映えが悪いお刺身になる可能性があります。
太刀魚を捌く際は、きっちり手入れされた包丁を使うようにしましょう。
太刀魚には寄生虫が住んでいるのか
太刀魚を捌くと内臓や筋肉部位に白い糸状のフニャフニャ動く物体がいる場合があります。
その動いている白い糸状の生物が太刀魚などに寄生するアニサキスです。
アニサキスとはイルカやクジラの体内に住まう回虫です。
イルカやクジラの便にはアニサキスの卵がたっぷり含まれており、その便を魚が食べると、魚の体内でアニサキスの卵が孵化し、幼虫となります。
そして、アニサキスの幼虫を体内に宿した魚をイルカやクジラが食べることによって幼虫のアニサキスがイルカやクジラの腸内で成長し、成虫になり、再び卵を産んでイルカやクジラの便となって魚に食べられるというサイクルを永遠に続けているのです。
しかし、イルカやクジラに食べられる前に人間の手によってアニサキスを体内に宿した魚を漁獲してしまうと、人間はイルカやクジラではないため消化管アニサキス症にかかってしまいます。
アニサキスは魚が生存している状態では腸内に住み着いているのですが、魚が死んでしまうと自らの力で腸を移動し、筋肉の方へ逃げようとします。
そのため、腐りかけている魚や生存している魚を捌いて食べる場合はアニサキスは魚の筋肉にはいないということになります。
消化管アニサキス症とは?
太刀魚 espada / Grilled Ahi
アニサキスはイルカやクジラに住まう回虫ですので、人間の体内に入っても成長することはありません。
しかし、アニサキスが最後の力を振り絞って人間の粘膜を食い破り、胃壁や腸壁に穴を開け、筋肉内に潜り込もうとします。
小腸は腸壁が薄いため、腸内に穴を開けてしまうことも報告されています。
消化管アニサキス症の症状は、胃と腸で症状が違います。
胃にアニサキスがいる場合は一定の時間で襲ってくるギュッとしぼるような胃痛と嘔吐が特徴です。
腸にアニサキスがいる場合は腹部の膨張感に加え、酷い腹痛に襲われます。腸閉塞に似た症状だと言われています。
アニサキスを食べた全ての人間がこういった症状を引き起こすわけではなく、アニサキスが胃壁や腸壁に穴を開けようと小さな身体から出てくる体液にアレルギー反応を起こすことによって引き起こされるのです。
日本では食品衛生監視員の監視マニュアルに「魚類からアニサキスが検出された場合は刺身用にするのは控え、鍋物など加熱用にまわすこと」と記述されているだけで廃棄するという対処は取っておりません。
そのため、スーパーやデパートなどで購入した太刀魚などにアニサキスがいたとしても、対応はしてもらえません。
もし、太刀魚をお刺身で食べたい場合は、生存しているものを購入して召し上がるのがよいでしょう。